CULTURE

2020年3月23日

心地よい関係に必要なのは、「理解」ではなく知ろうとすること【たなかみさき×心地よさを探す旅】

女性たちが、もっと自由に、素直に、軽やかに生きるために、必要なものってなんだろう?

これまでの価値観が少しずつアップデートされ、多彩な生き方を選べるようになった時代。女性は、みずからの心や身体が求める「心地よさ」に、どう応えていけばいいのでしょうか。そのヒントを得るために、「iroha」は「心地よさを探す旅」を始めました。さまざまなジャンルで活躍する方々とのおしゃべりを通じて、すべての女性が心地よく生きられるためのヒントを探します。

第1回のゲストは、「iroha」とのコラボ経験もあり、ほんのりセクシュアルなイラストでおなじみのイラストレーター、たなかみさきさん。最近はラジオパーソナリティーとして女性のお悩み相談にも乗っているたなかさんと、これからの女性に必要なものを探します。

 

たなかみさき
レトロでちょっぴりエロティックなイラストを描く、1992年生まれのイラストレーター。コラボレーション企画「irohaのいろは」では、「iroha」のアイテムをモチーフにしたイラストを寄稿。2020年1月、パルコ出版より書籍第2弾『あ〜ん スケベスケベスケベ!!』を刊行。

Twitter:@misakizon
Instagram:@misakinodon

 

 

あっさりイラストにフェチなこだわり。影響を受けたのは意外にも……

――「irohaのいろは」では、素敵なイラストをありがとうございました。コラボ前から「iroha」のことはご存知でしたか?

たなか:はい。だけど、こんなに種類があるとは思っていなかったですね。お話をいただいたときは、セクシュアルなものを噛み砕いて、世に出せるデザインにするという「iroha」のコンセプトが私の作品とぴったりすぎて、逆にコラボならではの化学反応が起きないのではと、心配でした(笑)。でも結果的にお互いの特徴が溶け合って、女性の性をさりげなく発信できるコラボになったので、よかったです。

 

――「iroha」のどのようなところを膨らませてイラストを描いたのですか?

たなか:アイテムの形からシチュエーションを連想しました。桜の花びらの形をしている「iroha HINAZAKURA」は、枝に女の子がとまっているような感じ。「iroha+ YORUKUJIRA」はくじらに乗ってプカプカしている感じです。「iroha FIT」の「MIKAZUKI」では、男女が三日月に腰かけている様子を描きました。月は女性の象徴なので、女性の世界に男性が入ってくるようなイメージですね。

 

※「irohaのいろは」の他作品はコチラ(https://iroha-contents.com/special/tanakamisaki/

 

――そもそも、たなかさんがセクシュアルなイラストを描くようになったきっかけは何だったのですか?

たなか:セクシュアルなモチーフがもともと好きで、学生時代はいわゆるエログロの世界にのめり込んでいました。でも絵で食べていくことを考えると、ファッション雑誌に載るようなイラストのほうが仕事はたくさんあるんじゃないかと思って、洋服が引き立つようなあっさりした作風に方向転換したんですよね。そしたら、思ったとおり雑誌からオファーをいただけるようになりました(笑)。

でも、ファッション雑誌に合うものを狙って描いているうちに、だんだん仕事が楽しくなくなってきたんです。そこから好きだったセクシュアルな要素を取り入れるようになりました。結果的にあっさりとセクシュアルのコントラストがハマって、いまのスタイルになったという感じです。

 

――セクシュアルな要素は、エログロから着想を得ていたんですね。いまのテイストからは想像できません。

たなか:でも、フェチ的なこだわりはエログロに通ずるところがあり、ずっと変わりません。人物はあっさりした線で描くけど、木目はネチネチ描いてみたり……。洋服やベッドのシワとか、細かい描写に上村一夫さんや丸尾末広さんの影響が表れていますね(笑)。なかなか気づく人はいないですが。

 

 

余計なつくり込みをせず、リアルとファンタジーのはざまで性を描く

――女性の性を表現するうえで、心がけていることはありますか?

たなか:「これ以上は描かない」というより、「みんな、どこまでアリなの?」と、試しながら描いているところがありますね(笑)。最近は陰毛を描いたりしていますし。

心がけていることのうち50%は、「実感が伴っているもののほうが、リアリティーと説得力がある」ということです。「なるべく嘘がないように描く」「おしゃれに描こうとしない」という信条があって、余計なつくり込みはしないようにしています。SNS用の写真を撮るときだけランチョンマットを使う、みたいなことはしたくないので。

そのぶん生活感をすごく大事にしています。イラストに最近買った座布団を登場させたり、ちり紙が散らばっていたり、畳にちゃぶ台やみかんの皮が置いてあったりすることが多いですね。

 

――では、残りの50%は?

たなか:「みなさんの想像にお任せする余白」を大切にすることです。人物に関しては、印象的な顔に描かないことでリアルとファンタジーのはざまを表現したいと思っているので、バランス感覚はすごく大切にしています。男性は特にそうですね。男性って、ちょっとヒゲを描いただけで「誰か」に似ちゃうんですよ。

 

――不思議ですね。

たなか:なので、ぎりぎり男性だとわかるくらいの、特徴やいやらしさを感じさせない顔にしています。女性はスタイルのバリエーションが豊かだから、特殊な髪型だったり、個性がちょっと強かったりしても「誰かに似てる」とはなりにくい。誰かに似てしまうと読者のみなさんが感情移入できなくなっちゃうので、人物の個性は薄めにしています。

 

 

――たなかさんがインスピレーションを受ける女性は、どんな人ですか?

たなか:最近は、坊主の人もいればアフロの人もいて、プラスサイズのモデルさんが評価されることも増えましたよね。私はいわゆる「男ウケ」のようなものを気にせず、自分自身を自分の好きなように装飾して生きている女性が大好きで、彼女たちから影響を受けています。

 

――「きれいってこういうもの」と定義づけられる時代は、終わりつつあるのかもしれません。

たなか:ほんと、時代遅れだなって感じますよね。SNSを見ているといまだにあるんですよ、「彼氏にチクチクして嫌だって言われた、どうしよう」みたいな脱毛サロンの広告が(笑)。「そんなこと言う人、いまどきいないよ!?」ってショックを受けましたし、変な「当たり前」を変えていきたいんです。

ちなみに私もいま、腕毛を生やしているんですよ。パートナーも「これでいい」って言ってくれましたし、生えたがっているんだから生やしとけばいいじゃないですか(笑)。「みんな同じになる必要はないのにな」と思います。

 

「それは本当にあなたの声ですか?」大切なのは、問いかけ続けること

――ラジオ番組『MIDNIGHT CHIME』では、パーソナリティーとしてリスナーのお悩みに答えていますよね。番組にはどんなお悩みが寄せられますか?

たなか:「20代で、まだセックスしたことがないから不安です」とか、「性に興味が持てずパートナーとすれ違ってしまった」といった悩みが多いですね。恋愛のお悩みだと「結婚したい」とか「不倫中だ」とか。

 

 

――そういった悩みを、たなかさんはどう受け止めていますか?

たなか:「それは本当にあなたの声なんですか? 世間の声ではないですか?」って思います。たとえば恋人から「ピンクの乳首以外イヤだ」って言われたとするじゃないですか。そこで自分の乳首の色に悩む前に、「なんでピンクの乳首がいいのか、私にちゃんと説明してください」ってことなんですよ(笑)。あなたは「ピンクの乳首がいい」っていう世間の声を、スカッシュみたいに壁に当てて、私に投げているだけなんじゃないのって。

性や恋愛のお悩みが生まれてしまうのは、そういう価値観のすり合わせをパートナーとできていない場合がほとんどだと思いますよ。

 

――自分で答えを見つけられず、相手ときちんと向き合えていないことが多い、と。

たなか:私も自分の意見に絶対的な自信を持っているわけじゃないので、「2人で話し合ったらどうですか」としか言えないです。そういえば、つい最近も「嫁き遅れ(いきおくれ)女子」っていう言葉がリスナーさんからのお便りにあってびっくりしましたね。「自虐する必要はないし、結婚を選ばずに幸せな人だってたくさんいるのに、そんな言葉がまだ残っていたんだな」って、スタッフさんとも話しました。「それはただの世間がつくった概念なんですよ」って。「嫁き遅れ女子」みたいな名前をつけると、呪いになっちゃいますよね。

 

――たなかさん自身は、そういった「呪い」から抜け出しているように見えます。

たなか:いや、全然そんなことないですよ。男ウケを意識していた頃もあったし、逆に「男に負けないぞ!」と男勝りになっていた時期もありました。でもいまとなっては、どちらも間違っていたなと思います。「男に勝とう」とか、「男には敵わない」とか、それもまた男性に対する差別じゃないですか。差別に差別で返すことをしていたら、終わりがなくなっちゃう。

 

――張り合うことで、心地よい関係性も失われてしまいますね。

たなか:そうですね。私は男でも女でも、どんな職業でもどんな年齢でも、同じ土俵に立って「自分の意見はこうです」と情報交換することを意識しています。結局、男も女も大変なんですよね。それを知らないと同じ土俵には立てません。まずは相手のことを知ったり、「あなたはどうしてほしいの?」とコミュニケーションを取ったりすることが大事だと思うんです。

……といっても、好きな人の意見は気にしちゃうんですけどね(笑)。

 

 

相手を理解することはできないけど、知ろうとすることはできる

――これからの時代、女性がもっと心地よく生きるためには何が必要だと思いますか?

たなか:相手を理解しようとするのではなく、知ろうとすることです。他人を完全に理解するなんて絶対に無理だし、私自身、「理解したい」とか「理解しました」と勝手に言われるのがすごく嫌なんですよね。だから、「理解」というパーソナルスペースの内側にある繊細な部分には、あんまり触れないほうがいいんじゃないかなと思います。

そうじゃなくて、相手に興味を持ち、相手を知ろうとすることならできる。そうやってお互いを知って、認めることが、同じ土俵に立つことにもつながるのではないでしょうか。

 

――女性を取り巻く価値観は、これからどう変わっていくと思いますか?

たなか:化粧品の広告に男性が出ているのを見て、「男は男らしく、女は女らしくという価値観はなくなっていくんじゃないかな」と思いました。ジェンダーという言葉自体、なくなっていくかもしれませんよね。パッと見て性別がわからない人がいても、みんなが性別を気にしない世の中になったらいいなと思います。選択的夫婦別姓がなかなか決まらない現状を見ると、まだまだこれからなんでしょうけど。

 

――とはいえ、これまでの価値観が意味を失い、「なんでもいい」と言われることで、戸惑う人もいそうです。

たなか:そういうときは、自分自身に興味を持って、育ってきた環境やルーツをさかのぼって知ることが大事だと思います。自分を知らないと、自分がどうしたいかもわからないじゃないですか。

何か疑問を持ったときに、立ち止まって、振り返って、ルーツや理由を辿ってみるのは大事な作業ですよね。たとえば誰かにモヤモヤすることを言われたとしても、「なんでだろう?」って理由を辿ると、背景におっきい「世間の声」があったりする。それに気づくと「なーんだ、あの人の声じゃなくて世間の声だったのか」と思えるので、おすすめです。

 

 

――ちなみに、たなかさんにとって心地よい場所はどこですか?

たなか:公園です。東京にある井の頭公園とか大好きです。近所の公園ならパジャマみたいな服で出かけることもありますし、家ではむしろ、ずっとパジャマでいることが多いですね。さくらももこさんも、作品のなかで「パジャマで仕事できる漫画家は最高だ」って言ってました(笑)。

 

――では、たなかさんが心地よくいられるためのマストアイテムは?

たなか:外に出るときは、赤い口紅をずっと持ち歩いています。唇が赤くないとそわそわしちゃうので、私にとっては精神安定剤の一種かもしれません。あとはお酒も好きですね。お酒を飲んでいるほうが自分の意見をすっと言えるんですが、お酒の力ばかり借りちゃダメだなって。2020年は地の心を叩き直して、ナチュラルに強いハートを手に入れることが目標です(笑)。

 

 

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https://iroha-tenga.com/

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