CULTURE

NEW 2020年11月18日

芸人バービーが綴る違和感。『本音の置き場所』に置いてきた真実とは

 

今回のゲストは、お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーさん。日頃からメディアなどで、ジェンダーや結婚に対する考え方、自分のカラダについてなど、社会の「あたり前」に疑問を投げかけています。

ウェブメディア「FRaU」では、そんな心の内を明かしたエッセイ「本音の置き場所」を10回にわたり連載。2020年11月に同タイトルで書籍化されたとのことで、本音を明かすことへの思いや、女性が生きづらさを感じる理由など、本にまつわるバービーさんの「本音」を探りました。

 

バービー
1984年北海道生まれ。お笑いコンビ・フォーリンラブのボケ担当。TVのバラエティー番組で活躍するほか、YouTubeの『バービーちゃんねる』では、美容や恋愛、生理、性、クッキングなど、幅広いテーマで発信。さらに「ピーチ・ジョン」とコラボし、ボディポジティブを訴えるなど、その活動は多岐にわたる。

Twitter:@Barbie_Babiro
Instagram:@fallin.love.barbie

 

リアルな気持ちを一旦置く。『本音の置き場所』のスタートとは

——2019年12月から「FRaU」でスタートした「本音の置き場所」は、累計200万PVを超える人気連載となりました。そもそも、どのような経緯で始まったのでしょうか?

バービー:フリーライターの武田砂鉄さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組がきっかけですね。私はそれまで、心のどこかで「テレビタレントとしての顔以外は隠さなければいけない」と思っていたのですが、武田さんはそれを理解しながらも、私が興味を持っている学問や思想について、突っ込んだ質問をしてくださって。そこで初めて、自分の考えをメディアで素直にお話しできたんです。

それ以降、Twitterやインタビューなど、公の場で自分の本音を語ることのハードルがぐっと下がって。しばらくして、「FRaU」編集部から「私たちの媒体を通じて本音を発信してみませんか」とお声がけいただき、連載が始まりました。

 

バービーさん

『本音の置き場所』(講談社)

 

——なぜタイトルを「置き場所」としたのですか?

バービー:毎日の気分が変わるように、考え方も時とともに変わるもの。「いずれ違う意見になるかもしれないけれど、いまのリアルな気持ちは一旦ここに置かせてもらいますよ」という気持ちで「置き場所」としました。気持ちの仮置場のような存在ですね。

 

——考えや価値観を、固定しないということですね。

バービー:そうですね。芯の部分は変わらないかもしれないけれど、社会の状況によって価値観が変わることはたくさんあります。結婚観なんかは特にそうで、どうしようかとフワフワしている気持ちさえも置かせてもらっています。だからこそ、物事を断言することはあまりしていませんね。

 

——カラダやご両親についてなど、繊細な話題にも触れています。本音をさらけ出すことに迷いはありませんでしたか?

バービー:もちろん、恥部をさらけ出すことに迷いや不安がないわけではありません。ただ、自分のなかの歯がゆい思いを文章にすると、自分の考えが整理されたり、新たな発見を得たりするんです。テレビではキャッチーな物事や笑えてオチがある話しかできないことが多いので、文章で本音を伝えることは、自分にとってすごく意義があると思っています。

 

女性の「生きづらさ」は、男女の対話のズレから生まれる?

——連載では、女性が日常的に感じている「生きづらさ」に触れ、大きな反響がありました。

バービー:連載をはじめてから、女性タレントさんから熱いメッセージをいただくことも増えましたね。「本当に、こういうことを言ってくれてありがとう」「胸が熱くなりました」とか。私のもとに届く言葉を考えると、「自分は生きづらさを抱えている」と自覚している人は、意外と少ないことに気づきました。なんとくモヤモヤしたり、違和感を持ったりはするけれど、その正体まではわかっていない人がほとんど。私の文章に触れて、はじめて「これが生きづらさなんだ」と実感した人もいるかもしれませんね。

 

「執筆活動も、長文を書くことも、今回の連載が初めて。なんならあれ、スマホで書いているんです。フリック入力ができないので、すごい勢いでタップして(笑)」

 

——連載の初回での「料理は好きだけど、得意だとアピールしたくない」「男の胃袋をつかみたくない」というエピソードは、まさに多くの女性が感じていたモヤモヤを言語化したものだと感じました。

バービー:たしかに、女性にとって共感しやすい話題だったと思いますし、モヤモヤの正体に気づくきっかけになれたと思います。あのお話を振り返ると、ちょっと前の自分だったら、もっと強い口調で男性を糾弾してオチをつけようとしていたかもしれません。「男の人は、不向きだからという理由で家事をやらない」とか、考えていましたから。

けれどいまは、「(男性とのあいだに)ジェンダーギャップを感じることもあるけれど、それはどちらか一方が悪いという話ではなくて、お互いさまだよね」という考えに変化しました。互いに責め合うのではなく、自分自身のエゴを見つめ直して、理解しあえるフィールドに立とうとすることが大事だよね、と。

 

——多くの女性が「生きづらさ」を抱えている背景について、バービーさんはどう捉えていますか?

バービー:私は、「女性と男性が同じテーブルに座って会話ができていないこと」が、理由のひとつにあると思います。つまり、そもそも両者の会話が成立していないのではないかと。理由はさまざまですが、例えば、女性側は、議論することに慣れていない、イエス・ノーの意思をはっきり言わない、男性側は鎧を取って弱さを見せることができない……。

ただ、男性の場合、自分より上の立場の人が変わらない限り、自身の意見を変える人は少ないように思います。私自身、対等に議論しようと働きかけても、一向に話を聞いてくれない知り合いがいて。でも、自分より上の立場の人や社会が変わりはじめたことで、「俺もいままでのスタンスじゃダメだ」と気づいたらしく、やっと話し合うことができました。

男性だけでなく、もちろん女性も、まずは対話しようとする姿勢を見せて、会話を成立させることが重要だと思います。それが、互いの「生きづらさ」を理解する第一歩になるのではないでしょうか。

 

 

コンプレックスは抱えたままでいい。でも、他人の評価に振り回されないで

——バービーさんはピーチ・ジョンとのコラボレーションを通して、ボディポジティブを訴えかける活動もしています。

バービー:ピーチ・ジョンさんとの下着づくりが、いまの私の思考や価値観をつくってくれたという実感が強いですね。下着づくりに向けて動き出したのは、じつは2017年から。いまでこそ、「自分のカラダは自分のもの」という価値観が日本に普及していますが、当時はボディポジティブという概念はそこまで浸透していませんでした。

それでも、自分でデザイン案を持っていって、「いろんなサイズの人が自分のカラダを見て、気持ちが上がるような下着をつくりたい」とコンセプトを伝えて、時間をかけて企画を練っていきました。そして結果的にボディポジティブの風潮が高まったタイミングで、発売することができたんです。

 

バービーさんがピーチ・ジョンとコラボした「クイーンブラ」

 

——そして同時期に武田砂鉄さんのラジオもあり、考えが深まっていったと。

バービー:そうですね。もともと自分の本音も発信するつもりはなかったのに、いつもちょっとしたタイミングで、誰かに背中を押されるというか。武田さんも、ピーチ・ジョンさんも、そう。そこで本音をポロッと発信するたびに、いままでモヤモヤを感じていた人たちが「いけいけ!」とさらに背中を押してくれる。その連続かもしれません。

 

——バービーさんがボディポジティブを発信することで、多くの女性が勇気づけられました。しかし一方で、まだまだ自分のカラダに自信が持てない人もいるかと思います。バービーさんはコンプレックスからどのように脱却しましたか?

バービー:そもそも私は、コンプレックスから抜け出した立場でお話しするつもりはぜんぜんなくて。コンプレックスは抱えたままでいいと思っているんです。私自身が楽観的なので、「まあ、ここまでできたらいいや」ってポジティブに捉えています。

女性が自分のカラダにコンプレックスを持ってしまうきっかけとしては、カラダのパーツに対する異性からの性的な目、親からの評価など、他者からの影響が多い気がします。ただ私は、そういったシーンで自分を客観的に見たときに、「他人から言われたことが必ずしも真実じゃない」と気づいたんです。真っ当に受け止めなくていいんです。美の基準は時代によっても、人によってもバラバラだし、極端な話、第三者が勝手につくった「基準」を押しつけられているだけのこと。それに振り回されて生きていくのも、なんだかな、と思います。

 

 

「明日死ぬかも」。だから執着がないし、不安で動けないこともない

——バービーさんは、著書に記した「本音」に至るまでに、どのような変化を重ねてきましたか?

バービー:いまでこそまわりから、「自由に生きているよね」と言われますが、もともとはすごく暗かったんですよ。10代の頃は男子ともお喋りできなかったし、大学に行っても友達がたくさんできたわけじゃない。でもやらずに悩んでいるほうが苦しいから、飛び込んでいってしまうタイプでした。しゃべれもしないのにスナックでアルバイトしたり(笑)。そうすると、笑顔で挨拶することすらできない自分に気づいて、自己啓発本を買って練習を重ねたり。とりあえず、トライアンドエラーを重ねていくうちに、「自分」がどんどん変化し、やりたいこともはっきりしていきました。

ある意味、自暴自棄とも言えますが(笑)、私は昔から「明日死ぬかもしれない」という切実な思いを抱いていて。だから執着がないし、不安で動けなくなることもない。後悔しないように生きていくことを大切にしたいと考えているんです。

 

 

——最後に女性が自分らしく、自由に生きるために必要なことを教えてください。

バービー:女性の性がからむ問題に関しては、女性が主体的じゃないことが多い。もちろん全員がそうではありませんが、胸や膣は「セックスに使うもの」と誤認識している人もいます。でも、それらはあくまで、耳や口と同じく、カラダの部位の一つ。どう使うかの権限は、本人にしかないんです。

女性の性欲だって、まるでそれが無いものとされていますよね。自分の性衝動に忠実になろうとしても、「仕方なくやっているから」とか、一つ言い訳が必要な状況がいまだにあります。「女性らしさ」を気にして、つい自分に言い訳をしてしまうんですね。

女性のみなさんに気づいていただきたいのは、その「女性らしさ」はあなたのためのように見えて、じつは男性のために都合よくつくられた幻想にしか過ぎないということ。もっと主体的に自分を見つめ直し、「何がしたいか」「どうすれば快適に過ごせるか」を考え、意思や行動をコントロールすることで、不自由から解放されるのではないかと思います。

 

——これからも、バービーさんの言葉が、私たちにとって最初の一歩を踏み出すきっかけとなりそうです。

バービー:快適に過ごしていくために、みんなで模索していけるようになると楽しいですよね。これからは、横のつながりも広げていって、多くの人と考え、発信する場をつくっていけたらと思います!

 

 

 

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