CULTURE

2017年7月31日

いろはにほへと「純愛」
佐内正史×大根 仁

からだが求める「気持ちよさ」を大切に、そして美しくあるために。女性の視点でつくられたセルフプレジャー・アイテム『iroha(イロハ)』をモチーフに写真家と文筆家がそれぞれの感性で描写します。

 

「純愛」

僕は熱心なTENGA愛好者というわけではないが、キャリア30年を超えるプロオナニストとして、製品のデザインや機能性、開発者たちの志の高さには常々シンパシーを感じている。
拙作映画『モテキ』でも重要なアイテムとして使わせていただいたし、映画に出演していたライバルオナニストであるリリー・フランキー氏が現場に差し入れた段ボール二箱分のTENGAが即時、現場スタッフ&出演者によって持ち帰られた事実から、もはやTENGAは使ってよし飾ってよし見られても良しのアイテムとして定着したと認識している。
その時、興味深かったのが数人の女性スタッフがTENGAを手にし「これ、超グッドデザインですねえ」、「かわいい~」と語り合っていた姿だ。「女性用TENGAのデビューもそう遠い将来のことではないな……」。それから2年の歳月を待たずして、irohaがリリースされたことは僕の先見の明などではなく必然だったのであろう。
『賢者の贈り物』という有名な短編小説がある。貧しい夫婦がお互いのクリスマスプレゼントのために、夫は妻に内緒で懐中時計を売りべっ甲の櫛を、妻は夫に内緒で自分の髪を切って売り時計の鎖を買うが、結局お互い役に立たなかった。という皮肉ながら心温まる話だ。その互いに通じ合う気持ちは純愛と言っても良いかもしれない。
どうだろうか?TENGAのグッドデザイン性を受け継いだirohaも、先述したように女性が周囲の視線を気にせず手に取れるアイテムではあるが、ここはひとつ男性からプレゼントとして贈るという選択肢はないだろうか?時計を売り払うまでもなく購入できる手頃な値段設定に加え、洒落た和菓子を彷彿させる可愛らしいフォルム。妻ではなくとも長年付き合ってきた彼女ならば、恥ずかしがりながらも喜んで受け取ってくれるのではないだろうか?さらに彼女が「実は……」と、バッグからTENGAを取り出したら、それは『賢者の贈り物』の作者O・ヘンリーが遥か百年以上も前に描いた純愛の形が、今もなお時空を超えて受け継がれている証なのかもしれない。

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