CULTURE

2018年1月29日

いろはにほへと「エッチしたい」
田口まき×山内マリコ

からだが求める「気持ちよさ」を大切に、そして美しくあるために。女性の視点でつくられたセルフプレジャー・アイテム『iroha(イロハ)』をモチーフに写真家と文筆家がそれぞれの感性で描写します。

「エッチしたい」

女性の性欲のピークは三十代から四十代という。一方、男性の性欲のピークは十代から二十代。
この事実だけ見れば、性欲に支配された男の子に振り回される女の子、という若いカップル像と、性的に淡白になった男性に対し、欲求不満を募らせる女性という夫婦像が浮かぶ。
しかし女の子だって、十代、二十代のうちからちゃんと性欲はある。これは私感だが、性欲のピークが三十代から四十代なんじゃなくて、そのくらいの年齢になってはじめて女性は相手に面と向かって、「エッチしたい」と口にできるようになるんじゃないかと思う。かつてそれが言い出せないばっかりに、満たされず精神的に不安定になった女性たちは、ヒステリーと診断され、病院で治療を受けていたという。映画『ヒステリア』に当時の治療の様子が描かれている。オイルで手を濡らした医師が、カーテンで目隠しされた貴婦人のスカートの中に深く腕を伸ばし、性器を直接マッサージするのだ。
「そのくらい自分で処理できるのに」と思うが、舞台となっている十九世紀のイギリスでは、女性に性欲はないと考えられていた。男性のみならず女性も、自分たちの性欲を認識できていなかった時代があったのかと驚いてしまう。『ヒステリア』は電動バイブレーターが発明されるまでを描く事実に基づいた映画だが、女性の自慰行為における受難は現代でもつづいている。自分の性欲を認めて、自分で解消することは罪じゃない。ガンガンやればいいと思う。なにより、「エッチしたい」と相手に伝える心理的ハードルに比べたら、オナニーってめちゃくちゃラクだし。大人の女たるもの、そのくらいのことができなくてどうする、とも思う。

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